金峰山

2015.7.24

23日 大弛峠13:45―国師ケ岳14:45―北奥千丈岳15:08―大弛峠16:00

24日 大弛峠5:20―朝日岳6:20―金峰山7:20~8:30―朝日岳9:30―大弛峠10:30

夜明けと共に起きると駐車場の車は少し増えていた。車の横にテーブルを出し、食事を済ませコーヒーを飲んだ後、ナナカマドの木をくぐって金峰山に向かう。霧が出ているが天気は回復に向かっている。今日は晴れそうな気配。

朝日が差し込むシラビソの森を登る。

登山道から光差す尾根と霧が渦巻く谷が見えた。風はないが空の雲の流れが速い。

朝日岳手前の岩場はまだ雲に包まれていて展望はなかった。森の中のハクサンシャクナゲを愛でながら10分ほど登ると朝日岳山頂。朽ちた標識が落ちていた。

朝日岳見晴らしからの富士山。端正な姿が雲海に浮かぶ。

朝日岳を過ぎると満開のシャクナゲロードが始まる。昨日の濡れたシャクナゲは妖艶な美女だったが今日は清楚な少女に変わっていた。

シャクナゲロードを過ぎると突然展望が開けた。青空を楽しみながら進むと遠くに五丈岩が見える。一気にテンションが上がる。

一番高い岩の上に立つと、山頂標識と三角点は足下の岩場にあった。五丈岩は下界を見下ろすかのようにどっしりと構えている。

高さ15m、5階建てのビルに相当し圧倒的な存在感を放っている。古くから信仰の対象となり、かつては籠堂が置かれ逗子には蔵王権現が祀られていたという。

五丈岩の正面から見て右側の巨岩の上に祠があり石積みで守られている。調べるとこれは本櫻神社(山梨県)の本宮の祠で、五丈岩の下には金峰山神社(長野県)の奥の院の祠があるらしい。

五丈岩の後ろに続く尾根、千代の吹き上げコース。14年前はこの尾根を登って五丈岩に達した。帰りは雪が舞っていたっけ。

難攻不落の砦のような瑞牆山。

八ヶ岳には雲がかかっている。

鳳凰三山の後ろに北岳、間ノ岳、農鳥岳の白峰三山が見える。

そして五丈岩と富士山

端正な姿の富士。どこから見ても美しい。

五丈岩を眺めながらのんびりコーヒーを飲む。近くで休んでいた青年が飴をくれた。山を始めたばかりで簡単な山から登っていると言っていた。1時間ほどすると突然雲が上がってきた。そろそろ潮時かと下山を開始する。

朝日岳の見晴らしから振り返ると五丈岩の雲はすっかり晴れていた。

森の中を降りる。シラビソやコバイケイソウの若葉に混じって、気の早いナナカマドが紅葉していた。

約5時間で駐車場に戻る。来るときは長野側から来たがあの悪路はもう運転したくない。帰りは山梨側から帰る。

高速道路を走っていると前方にとんでもないものが現れた。黒い雲から一筋の渦が地上に向かって伸びてくる。竜巻だ。まずい。高速道路では逃げ場が無い。と思っていたら1分ほどで渦は消えていった。良かった。無事に帰れそう。

国師ケ岳

2015.7.23~24

23日 大弛峠13:45―国師ケ岳14:45―北奥千丈岳15:08―大弛峠16:00

24日 大弛峠5:20―朝日岳6:20―金峰山7:20~8:30―朝日岳9:30―大弛峠10:30

14年前の秋、瑞牆山と金峰山をセットで登った。どちらも個性的な岩峰で思い出深い山だ。しかし相棒はまだ登っていないというので今回の山行となった。同じコースではつまらないので三百名山の国師ケ岳と金峰山をセットで登ることにした。家から大弛峠までを調べると長野側からの方が時間も高速代も節約できる。長野側は悪路らしいが4WDなら問題ないだろうと思い長野側から行くことにした。

大弛峠は雲に覆われ駐車場もがらがらだった。それにしても長野側の悪路は想像以上だった。

駐車場に着くとすぐ雨具を着て国師ケ岳に向け出発。雨は降っていないが雲の中なので湿度は100%。深い森の中でひんやりと涼しかった。

大弛峠2365mは車で超えられる最も高い峠という看板があるが二度と超えたくはないと思った。国師ケ岳へはこの先の大弛小屋の前を通って登っていく。

登山道は整備され雲にぬれた階段がどこまでも続いている。針葉樹の若葉が美しい萌黄色に輝いていた。

階段は人工的だが周囲は原始の森。シシガミが歩いていそうだ。

15分ほどで夢の庭園の分岐に到着した。展望は期待できないが一応回ってみる。最盛期を迎えたハクサンシャクナゲが雨に濡れ、妖艶な色気を振りまいていた。

夢の庭園を巡る。予想どおり真っ白で展望なし。白昼夢の庭園を歩く。

元の登山道に合流し国師ケ岳を目指す。空は次第に明るくなってきている。

前国師ケ岳を過ぎ、いったん鞍部に降り、10分ほど登り返せば国師ケ岳の山頂。

国師ケ岳に到着。ここから金峰山や富士山が見事に見えるはずなのだが・・・。 雲が動いているので晴れ間が出ないかと淡い期待を持ち、三角点に座ってスマホで時間をつぶす。1等三角点なので座りやすい。

空はいっこうに変わらないのでいったん鞍部に戻る。鞍部のベンチに腰掛け、北奥千丈岳に行くかどうか考える。

せっかくなので歩き出すと山頂まで5分だった。あっという間に北奥千丈岳に到着。ここからも金峰山や富士山が見事に見えるはずなのだが・・・くどい。

景色が見えなくても見るものはある。巨石の間に小さな狛犬を発見。ちゃんと「あ・うん」の2体がそろっていた。

そろそろ戻ります。ハクサンシャクナゲの森を抜けてもう一度夢の庭園へ。

夢の庭園の雲が晴れてきた。花崗岩とシラビソが調和する庭園。どこまでも続く針葉樹の森。なぜかロードオブザリングを思い出した。

明日歩く朝日岳が見える。金峰山はあの雲の中。
天頂の雲が晴れ明るくなってきた。下界では霧が激しく流れているようだった。

大弛小屋でバッジを購入。テン場では学生風のグループが賑やかに設営していた。

青空が現れた。明日の金峰山はいい天気になりそう。

光を浴び、緑が一段と輝きだした。

早池峰山

2015.7.12

河原坊登山口5:00―御座走り6:50―山頂7:50~9:20―天狗の滑り岩9:50小田越登山口11:00―河原坊登山口11:30

早池峰山に登るならハヤチネウスユキソウが咲く季節と決めていた。花のピークは7月の第1週といわれているが梅雨のため雨の日が多い。今年やっと休日と天気がぴったり合った。前夜に河原坊駐車場に入り車中泊で夜明けを待つ。涼しくて快適な一夜だった。暗いうちに起きて朝食を済ませ、河原坊登山口出発はちょうど5時だった。

快晴の日曜日というのに河原坊はひっそりとしていた。登山届けの箱の前に、過去のトイレ事情の写真があった。今は携帯トイレの使用が義務づけられている。もちろん私も用意して登った。

最初は明るい樹林の中を進む。7月だというのに涼しいくらいで気持ちがいい。コメガモリ沢を何度も渡りながら次第に高度を上げていく。

緑が美しい明るい樹林。クガイソウやミヤマシシウド、センジュガンピなどが目を楽しませてくれた。

30分ほど登ると背後の薬師岳に日が差してきた。早池峰山は蛇紋岩の山だが薬師岳は花崗岩の山。隣り合う山で全く違うのは興味深い。2つの山の高山帯・森林植物群落は国の特別天然記念物に指定されている。いつかあっちも登ってみたい。

朝日が差し薬師岳の霧が晴れていく。今日は最高の天気になりそう。

樹林帯を抜けるとコメガモリ沢の岩も大きくなり、前方に岩尾根がそびえ立ってきた。もうすぐここの霧も晴れるだろう。

前後に他の登山者は見えない。マイペースで快適に登っていく。

早池峰山の尾根にも光が差し、緑が輝いてきた。東北の山は千メートルちょっとで森林限界を迎える。岩が壁のようにそそり立ち、沢を登る人たちの姿が見えてきた。

ごつごつした岩が登攀意欲をそそる。登山道にはロープが張られ植物の保全が図られていた。

沢を離れると岩の間に様々な高山植物が姿を現す。ハヤチネウスユキソウも所々で見かけた。早池峰山には5種の固有種があるそうだがいくつ見られるだろうか。

出発から1時間40分、登山道は岩場の尾根になってきた。次第に急になっていく。快晴無風。素晴らしい天気。

振り返るたびに谷の向こうの薬師岳が低くなっていく。美しい尾根と可憐な花、カメラの時間が長くなりなかなか前に進まない。

御座走りの標識を過ぎると岩は急に大きくなった。巨岩にはいろいろ名前がついているようだがどうでも良かった。それより岩の間の色とりどりの花が美しかった。

大きな一枚岩。古い非火山性の蛇紋岩は滑りやすいといわれているのでロープを伝い慎重に登っていく。表面がぬれていたら怖そう。

花は岩の隙間にもけなげに咲いている。まさに高山植物の群生の間を登っていく。

この鎖場を過ぎると傾斜もゆるくなる。山頂直下にも素晴らしいお花畑が広がっていてなかなか前に進めない。鎖場から山頂まで15分かかった。

少しは鎖場があった方が楽しい。ほんのちょっとアルペン気分を味わえる。

山頂到着7:50。すでに何組かの登山者が休憩し、思い思いに写真を撮っていた。

山頂は思いのほか広い。一段下がったところに避難小屋があるが緊急用で宿泊はできない。

山頂には早池峰山神社奥宮と小さな祠あった。6月の山開きの際は多くの登山者で賑わい、早池峰神楽権現舞が奉納されるらしい。

祠の前の三角点で記念撮影。祠には手作りの山名板が置いてあった。

山頂標識で記念撮影。薬師岳が足下に見える。遠くには八甲田、岩木山、鳥海山などが見えているはずだが山座同定より図鑑片手に花の同定のほうが楽しい。

山頂標識というより道標かな。高さの表示がないのも珍しい。

巨岩の上で早い昼食を済ませ、のんびりデザートを食べながらスケッチをする。こんな日は早く降りるのがもったいない。結局山頂には1時間30分もまったりしていた。

いつまでもノンビリしていたい至福の時。

山頂にも沢山の花が咲いている。植物を踏まないよう岩の上を歩く。

まるで手入れの行き届いた花壇のよう。

そろそろ下山の時間。山頂を振り返るとゆっくり雲が流れていた。

赤い小さな建物は早池峰神社奥宮。人が集まっている辺りで神楽を奉納するらしい。

これから下山する小田越への道。なだらかな斜面と五合目御金蔵が見える。そしてその先にある薬師岳が雄大に裾を広げている。

最初は賽の河原、御田植場を目指し東に進む。ここは高山植物の宝庫でなかなか前に進めない。東には剣が峰があるが途中から南下する。

木道を歩く。小田越から登ってくる人もまだ沢山いた。

山頂を振り返ると避難小屋の赤い屋根が見えた。ここにはトイレブースがあるので試しに使ってみた。使用済みのものは今ザックの中にある。

入れ替わるように小田越登山口からの団体が山頂に到着した。皆さん楽しそう。

この辺りにはさまざまな高山植物が色とりどりに咲いていたが、特に念願だったハヤチネウスユキソウの群落は素晴らしかった。

今までミネウスユキソウなどは何度も見ているがまるで屍のようで綺麗だと思ったことはない。しかしハヤチネウスユキソウの気高く凜とした姿は貴婦人を思わせる。日本のエーデルワイスとして愛される理由が分かった気がした。

ハヤチネウスユキソウ。さすが早池峰を代表する花。気高い。
ハヤチネウスユキソウの白とミヤマオダマキの紫。互いに際立つ。
ハヤチネウスユキソウの群落。何と過酷な場所に。

やがて八合目の天狗の滑り岩のはしごを降る。写真では急に見えるが角度があるので問題はない。

ここにも小さなお花畑が点在し、時間が過ぎるのを忘れさせてくれる。

登山道脇に耳を持った巨岩があった。トトロ岩と勝手に名付けた。

小田越を見下ろすトトロ岩。しかし後に「山猫岩」と変更した。

なだらかな斜面を降り、岩の点在する五合目御金蔵に向かう。

なだらかなのでこのコースを往復する人も多いようだ。まだまだ登ってくる人がいる。

樹林帯に入るとトイレブースがあった。携帯トイレは自分で用意する。

登山口にある携帯トイレを捨てるためのコンテナ。忘れたら大変。

登山口に到着。まだ11時。さわやかで最高の天気。

河原坊までノンビリ歩いて戻る。早池峰の山頂が見えた。

途中、宮沢賢治の詩碑があった。昭和47年に大迫町民が建てたものらしい。ここでは「イーハトーボ」といっている。いろいろ変遷があったらしい。

河原坊に到着。往復6時間30分の楽しい旅だった。これから汗を流し、栃木県まで帰る。

途中、道の駅はやちねに立ち寄った。駐車場では宮沢賢治の作品「どんぐりと山猫」のオブジェが出迎えてくれる。早池峰は「どんぐりと山猫」のモデルとなった場所らしい。そうか小田越に降る途中にあった巨石は、トトロではなく山猫だったのだと納得した。

すきとおった風がざあっと吹ふくと、栗くりの木はばらばらと実をおとしました。一郎は栗の木をみあげて、 「栗の木、栗の木、やまねこがここを通らなかったかい。」とききました。栗の木はちょっとしずかになって、 「やまねこなら、けさはやく、馬車でひがしの方へ飛んで行きましたよ。」と答えました。   宮沢賢治「どんぐりと山猫」

今回購入した山バッジはどちらもハヤチネウスユキソウのデザイン。これも山登りの楽しみの1つ。