石鎚山

2016.4.30

成就社9:55~一の鎖11:17~二の鎖11:30~三の鎖12:00~弥山12:10~天狗岳13:15

9時に駐車場に着きさっそくロープウェイ乗り場に向かった。百名山なのに、信仰の山なのに、狭くて錆び付いた汚い入口だ。足元では石に描かれた白い猫がこちらを見上げている。猫石には何か意味があるのだろうか。

ロープウェイとリフトを乗り継ぎ10分程歩くと石鎚神社成就舎に着いた。成就舎とは役の行者が石鎚山を開山し「我が願い成就せり」と言ったからとか。ここは標高1450m。食事処や土産屋、宿泊所などが並び、山の上に小さな町ができているようなものだ。

9:55 神門をくぐりいよいよスタート。登山者にとっては登山道だが行者にとっては修験道、信者にとっては表参道。心して歩かなくては。

 

道は鳥居をくぐり八丁坂を穏やかに下っていく。正面には常に石鎚山の稜線が見える。15分程下り八丁を過ぎると登りに転じる。

 

所々でちょうど満開のアケボノツツジが出迎えてくれた。

 

10:50 前社森売店。店は開いているが客は見当たらない。「あめゆ」とは何と歴史を感じる飲み物だろう。飲まなかったけど。

 

売店横に試しの鎖があった。後の3本の鎖を登れるかどうかを試す鎖だが、単に登って降りるだけなのでここはパス。見上げると数人が挑戦していた。

 

11:03 夜明かし峠。小さな洞とお地蔵様が祀られていた。ここは成就社と山頂のほぼ中央。石鎚山の稜線が間近に見られる。右のふくらみが弥山、左が天狗岳だが、切り立った岸壁の上にあるのが分かる。

 

11:17 一の鎖に到達。ここは33mという短い鎖なので多くの人が挑戦していた。鎖が無くても登れるような簡単な岩場だ。私が登り始め次に相棒が登ろうとしたときユニフォーム姿の学童野球チームが一斉に割り込んできた。指導者は野球だけじゃなくルールも教えろと言いたい。頭にきた相棒は迂回路に行ってしまった。

 

一の鎖を終えると二の鎖、三の鎖が頂上に向かって一直線に伸びているのが見渡せる。鎖に取り付く登山者が蜘蛛の糸に群がる亡者のように見える。

 

11:30 二の鎖には鳥居があった。ここは土小屋への分岐点にもなっていてトイレや休憩所もある。鎖場を見上げながら休憩し迂回路に回る人も多いようだ。

 

二の鎖は65m。一の鎖の約2倍に伸び傾斜もきつくなった。登っている子どもは見当たらない。女性も少なくなった。65mと言っても1本の鎖ではないので所々で休んだり写真を撮ったりしながら登ることができる。

 

最初は適度な岩があったが登るにつれ足場が狭くなり傾斜がきつくなってくる。長い年月で岩が磨かれすべる。前の登山者と間を開けないと危険な感じだった。

 

足をかける岩がない場合は腕力で登る。鎖が太くて持ちづらい。重くて岩から持ち上がらない。腕が疲れる。

 

12:00 二の鎖が終わるとすぐ68mの三の鎖。疲れてきた。登る人が少なくなってきた。一呼吸置いて取り付く。重い。滑る。これは正に修行だ。

 

天狗岳が見えてきた。

 

頂上に人がいるのが見える。もうすぐだ。

 

三の鎖を終え見下ろす。よくこんなゴッツイ鎖を設置したもんだ。鎖の上部で迂回路を登ってきた相棒が涼しい顔で待っていた。

 

12:10 頂上弥山の石鎚神社奥之宮頂上社に到着。やけに混んでる。

 

天狗岳が見えた。鋭い山容は信仰の対象になって当然だな。天狗岳への降り口に行列ができていた。しかもこの行列なかなか進まない。一体何やってんだ。

 

上から覗いてみると下からも見上げていた。

 

こういう状態だった。この狭い岩場がすれ違えないため交互に10人ずつが行き来していた。しかし天狗岳に向かう人の中に岩場が初めてという人がいて立往生しているのだ。途中まで行ったけど怖くて降りることも登ることもできない、そんな人がたびたび現れる。3m下った所で「こわい~」とか言って渋滞を作っていた。

 

あきれて昼食にする人達、中には神社にお参りだけして帰る人もいるようだ。

40分並んでやっと岩場を抜けられた。山頂への道は岸壁の反対側を歩くので危険なところや怖いところはない。

 

もうすぐ山頂。試しに岩を登って岸壁を覗いてみるとものすごい高度感、足がすくむほどだ。

 

山頂の岩の最高点に小さな洞が祀られていた。ここでは記念写真で待たされた。

 

13:15 やっと1982mの天狗岳山頂到着。雲一つなく最高の眺めだった。山頂の先の誰も来ない岩場に腰を下ろし昼食にした。

 

昼食を終え神社のある弥山に戻る。

 

13:45 無事帰還。

 

弥山の混雑は終わっていた。後は一気に下る。

 

15:18 成就社に戻ってきた。広い境内を歩いていると遠くからこちらに一直線に歩いてくるものがいる。

 

足元まで来るといきなりゴローンと寝転がり見上げてくる。これがロープウェイ入口の猫石の正体なのか。

 

猫をなでているとどこからか現れた男子学生が何も言わず一緒になってなでていた。変なヤツ。

 

成就社から15分程歩き、アケボノツツジの絶景ポイントに行ってみた。石鎚山をバックに満開だった。この時期にしか見られないアケボノツツジ。得した気分だ。

 

大木のアケボノツツジ。関東に咲くアカヤシオとの違いは雄しべに毛があるかどうかだけらしい。

 

ちょっと混んでたけど大満足の石鎚山だった。明日は最終日、観光して帰る。

剣山

2016.04.29

リフト西島駅12:30~剣山13:00~次郎笈13:45~大剣神社14:40~西島駅15:00

羽田を発ち、しばらくすると眼下に日本アルプスの雪をかぶった峰が見えた。何という山かは不明だがこんなにはっきり見えるのも珍しい。高松空港に到着後レンタカーに乗り換え、剣山の登山口「見の越」に着いたのは12:00だった。

 

駐車場は満車だったが何か買えば駐車代無料というお土産屋さんがあり運良く止められた。バッジを買いリフト乗り場に向かうと何やら人だかりが。今日は剣山の山開きだった。祝詞をあげる神主さんとテレビ局のカメラを横目にステージでは親子がボリュームいっぱいにして忍たま乱太郎を歌っている。もう何が何やら‥‥

 

喧騒を離れリフトで西島駅に向かう。他には誰も乗っていない。

 

リフトから見上げると西島駅の周辺の木が白い。霧氷だ。風が冷たそう。

 

12:30 リフト西島駅。なだらかな登山道が始まる。あと205m登れば山頂なので本当に楽ちん百名山だ。

 

5分程で刀掛の松に着いた。枯れた大木が横たわっているだけ。安徳帝が剣山へ登る途中ここで休み、汗だくで宝剣を持ち続けている従者に松の枝に宝剣を掛けて汗を拭くよう言葉をかけられたという、とってつけたような伝説がある。

 

整備された階段を上り、木の鳥居をくぐると、

 

ブリキの煙突のような鳥居の剱山本宮宝蔵石神社。お参りして山頂に向かう。

 

神社の周りの木々は霧氷で包まれていた。山頂まで続く木道を登っていく。

 

木道は山頂を1周し山頂標識は木道の外に低くあった。集団の記念撮影を拒否する見事なつくりだ。

 

1等三角点は木道の中央でしめ縄に飾られている。しめ縄は神の領域との境界を表わしている。この三角点は神か。それにしてもこんなに上げ底でいいのか?

 

ジロウギュウへの稜線が綺麗に見えた。わずかだが歩く人の姿も見える。風が強いが予定通りジロウギュウに向かった。この美しい稜線を歩かないわけにはいかない。霧氷が花を添えている。

 

稜線の東側では風を受けず快適に歩けた。

 

西側斜面では風を受け体感が下がる。霧氷は水蒸気が凝結したもので風に向かって成長するため全部西に向かって伸びている。それにしても木の枝には着いているが笹の葉には全くない。実に不思議だ。

 

もうすぐジロウギュウ。山頂にいた人たちが下りてくる。

 

誰もいなくなったジロウギュウに到着。360度の展望だ。

 

360度の展望だが北アルプスのように特徴的な山が無く山座同定ができない。こちらがたぶん三嶺の方向だろう。風が強いので長居はできなかった。

 

剣山に向かう人たち。左手には丸笹山と山腹を走るスーパー林道が見える。

 

丸石の方向に下りる人たち。午後だというのに霧氷は融ける様子もなかった。

 

剣山直下からリフト乗り場に向かった。途中に名水百選に選ばれている御神水がある。せっかくなので飲んでみたい。

 

しかし土砂崩れがあったらしく御神水への道は通行禁止。一度大剱神社まで登って大剱道を下りなければならなかった。あの大岩は大剱神社の御神体のようだ。

 

大剱神社の柱には「天地一切の悪縁を断り 現世最高の良縁を結ぶ」とある。すごいな。でも誰もいなかった。

 

リフトの西島駅に戻ってきた。

 

リフトを降り見の越に降り立つ。山開きの行事は終わり落ち着いていた。見上げると剣山とジロウギュウの山頂だけに日が差していた。

明日は石鎚山。明日も天気は良さそうだ。

瑞牆山

2015.10.25

瑞牆山荘7:15~富士見平8:00~天鳥川8:30~山頂(9:40~10:10)~瑞牆山荘12:00

10年ぶりの瑞牆山登山。快晴の休日なので駐車場が心配だったが7:00に着くとまだ30台ほど余裕があった。身支度を調え瑞牆山荘前を出発、カラマツの黄葉越しに岩峰が見える。前回も秋だったが瑞牆山は秋が一番美しい。

 

富士見平には予想以上のテントが張られていた。駐車場から50分の場所だしカラマツの黄葉が綺麗だし、ここでのんびりするのも有りだなと思った。小屋は花が飾られ人の息吹が感じられる。10年前は無人の廃墟だった。ちょっと足を伸ばして富士山を見に行った。黄葉した木々の間から端正な富士山が見えた。

 

薄暗い樹林帯の岩だらけの歩きにくい道を進み天鳥川出会に下りる。大きな桃太郎岩には細い木の支えが散乱していた。こういう大きな岩にはだいたい桃太郎か鬼の名が付いているものだ。

 

登山道は巨岩上を進むが鎖があるので子どもでもすいすい登っていける。1カ所だけ、岩が崩れはしごがつぶされた箇所では渋滞が発生していた。

 

9:30 山頂直下で食事中のグループがいた。バーナーを使って本格的な食事をしている。瑞牆山の山頂は広いが平らな場所はない。だからここでバーナーを使っているのだろう。山慣れしたベテランらしい。それにしてもずいぶん中途半端な時間の食事だな。朝食それとも昼食?

 

山頂まで10分の案内から4分で山頂。丸板のダンゴ型標識も健在だったがその他に標識が2枚増えていた。山頂はまだ人も少なく快晴無風、最高の天気だ。

 

遠くに見える雪をかぶった富士山。この角度から見る富士は最高に美しい。

 

近くにある金峰山。五丈岩のトンガリはどこからでも分かる。

 

金峰山と富士山のコラボ。裾のカラマツもいい色出してる。

 

足下のヤスリ岩。あれをクライミングで登る人がいるとは信じられない。折り重なる峰々には北アルプスとは違った美しさがある。

 

山頂も人が増えてだんだん賑やかになってきた。若い登山者がはしゃいでいる。勇気を出して前の岩に飛び乗ったのはいいが怖くて立てないようだ。

 

八ヶ岳と蓼科山が見える。今日はどの山に行っても最高の展望だろう。

 

鳳凰山のうしろに北岳、間ノ岳、農鳥岳の白根三山が顔を出している。右手には甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、アサヨ峰も見えた。

 

遙か遠くに御嶽山。中央アルプスの木曽駒ヶ岳や空木岳も見えた。

 

奥にあるのは左から上河内岳、聖岳、赤石岳、悪沢岳の南アルプスの名峰たち。

 

おやつと山座同定を楽しんで下山に取りかかる。富士見平を過ぎると輝く黄葉の中でそよ風が心地よかった。

 

帰る途中、バックミラーに瑞牆山の全容が見えたので車を降り写真を撮った。秋色の里山の向こうに瑞牆山がそびえている。いつまでも眺めていたいと思うような美しい風景だった。

乗鞍岳

2015.10.10~11

10日 三本滝バス停9:20~畳平10:00~乗鞍岳11:40~三本滝バス停15:30

11日 恵那山登山口7:40~登山断念

10月も中旬に入り山は紅葉の季節。快晴とは行かないものの天気予報は晴れや曇りのマークが並んでいる。1日目は晴れの予報が出ている乗鞍岳で紅葉を楽しみ、2日目は曇りだが恵那山に登るという計画を立てた。恵那山は展望が良くないことは知られているので展望より紅葉を楽しもうという計画だ。しかし予想外の天気の連続だった。

乗鞍岳はマイカー禁止なのでバスに乗り換えなくてはならない。登頂後は紅葉を楽しみながら徒歩で戻ってくるために一番高いバス停「三本滝」で乗車することにした。夏のピーク時にここで待つと満員の時は乗れないというリスクがあるが、秋は激混みというまでにはならないようだ。
8:45 駐車場はまだガラガラ、バスを待つ人もまばらだった。

次のバスまで30分程ある。辺りを散策していると変な場所に赤いコーンが並べてある。しばらく見ていると子タヌキが3匹現れた。笹の中に巣がありコーンで保護しているらしい。警戒しながらもかわいい仕草を振りまいていた。

バスに30分ほど揺られ畳平に到着。風が強い。みんな登山中なのだろう人はほとんどいない。身支度を調えさっそく出発する。

10:10 まずお花畑に向かう。右に行くと1週30分のお花畑だがこの時期お花畑を見学する人はいほとんどいない。直進し登山道に合流する。

登山道を少し進み不消ケ池を振り返る。右手に富士見岳、左手に不動岳、正面に見えるのは魔王岳だろう。

左手に大雪渓が見えてきた。ガチガチの雪でスノーボードをやっている人がいる。剣が峰の山頂が白い。 雪? 霜? 何だ?

肩の小屋先の施設でトイレを借りる。この赤い建物は東大宇宙線研究所というらしい。ここまではトラックも入れる太い道路が整備されている。

10:50 やっと登山道らしくなってきた。朝日岳、蚕玉岳が見える。剣が峰までは50分の道のり。標高が高いので息が切れる。

少し登って振り返ると摩利支天岳の山頂に乗鞍観測所が見える。元はコロナ観測所だったが老朽化のため閉鎖されたらしい。今は人工衛星で観測する時代だ。

登山道は上るに従い岩が大きくなり、さらに上では巨岩の上を歩くようになる。

11:20 蚕玉岳を過ぎると眼下に権現池が見えてきた。火口湖としては日本有数の高所にある。青空は消え雲が増えてきた。

北には奥穂から前穂への吊尾根、その奥に槍ヶ岳が見える。

正面に剣が峰の鳥居と奥宮が見えてきた。岩が白くなっている。これは霧氷だ。

11:40 山頂到着。辺りは霧氷だらけ。霧氷は水蒸気が物体の表面で氷になったもので風に向かって伸びる。別名えびのしっぽ。さらに成長したものが樹氷だ。

本宮でお参りしバッジ購入。宮司さんも大変だな。

隣の御嶽山は噴煙をあげていた。御嶽山が噴火したのは1年前、2014,9,27。犠牲になられた方のご冥福をお祈りする。   

霧氷が砕け落ち雪のように積もっている。正に真冬の氷点下の世界。風も強く長居する人はいない。11:45 早々と山頂を後にし、頂上小屋に向かう。

真新しい頂上小屋は閉まっていた。小屋の前で風をよけながら急いで昼食をとる。

12:30 肩の小屋からバス停「肩の小屋口」に下りる。ガチガチの大雪渓ではまだスノーボードを楽しんでいる人がいた。
12:50 肩の小屋口バス停。ここから紅葉見学の始まり。

遊歩道と言うより水が流れた跡を歩く感じ。位ヶ原山荘まではほぼ落葉していた。

山荘を過ぎると紅葉が現れた。静かな小道が続き、他に誰もいない。

遊歩道は車道を縫うようにして進んでいく。

柔らかい光とさわやかな風が心地良い。さっきまで真冬の寒さだったことを忘れてしまう。

14:50 三本滝の分岐に到着。ついでに滝を見学していく。日本の滝百選に入っているらしいので期待する。

3つの沢の合流地点にあるため3本の滝が並んで見える。滝は三者三様でそれぞれが美しい。おまけの見学で得した気分になった。

15:30 バス停に戻ってきた。偶然にも登山2:40、紅葉見学2:40だった。


下山後、飯田市のホテルまで2時間ほど車を走らせる。明日は広河原登山口から恵那山に登る予定。天気予報は曇りだが紅葉見学にはちょうどいい。ホテルで汗を流し居酒屋で前祝いをし、明日に備えて早めに寝た。

朝起きてみると雨が降っている。激しい雨ではないがテンションが下がる。天気予報を調べると大変なことになっていた。恵那山の北側に雨雲が発生し20年に一度位の局地的大雨が降っているという。登山口は北側ではないがもし雨雲が流れてきたら川を渡れなくなる。以前にも川で事故が発生している。今日の登山は無理、断念する。でもせっかく来たのだから駐車場の様子を見に行った。

7:40 駐車場には1台だけ車が止まっていた。車中泊後まだ寝ているのだろう、窓ガラスが白く曇っている。まだ雨は止まない、迷わず駐車場を後にした。

雨が上がれば霧ヶ峰とか美ヶ原とか、ちょっと立ち寄ってみようかと思ったが雨はますます強くなっていく。あきらめて栃木に直帰することにした。

笠ヶ岳 3日目

2015.9.21~23

21日 新穂高温泉鍋平10:40-登山口11:30-ワサビ平小屋12:50-鏡平小屋16:20

22日 鏡平小屋6:20-抜戸岳11:45-笠ヶ岳14:00-笠ヶ岳山荘15:00

23日 笠ヶ岳山荘5:30-稜線分岐6:50-笠新道登山口11:00-新穂高温泉12:00

4:30に起床し自炊テーブルでパンとコーヒーの朝食を済ます。隣ではガスバーナーで食パンを焼くおじさんがいい匂いを振りまいていた。5:30準備が整い外に出てみると槍穂のシルエットが見えた。

山の朝は寒くダウンを着て出発。今日も雲一つなく最高の天気になりそうだ。

焼岳、乗鞍岳、御嶽山が一直線に並んで雲に浮かんでいる。霧の下に新穂高温泉の町並みがうっすらと見えた。

テン場はまだ動き始めていない。そろそろ朝食の準備を始める頃だった。

サヨナラ 笠ヶ岳。

笠ヶ岳を振り返る。下りはいつも「もうこんなに下りたのか」と驚く。太陽はまだ槍穂に隠され、朝日は差し込んでこない。

抜戸岩。

抜戸岩を過ぎると双六岳や鷲羽岳が顔を出した。槍穂から差した光が山頂を照らしている。低い山には霧がかかっている。

笠ヶ岳にも朝日が差した。明暗のコントラストが綺麗だ。登山道は稜線の西側に続いているのが見える。東側は崩壊の危険があるのだろう。

東側に回り込むと一気に光が差し込み、目が痛いほどだ。

笠新道分岐に到着。ここから一登りすれば稜線に出る。

稜線から杓子平を見下ろすとすでに何人もの人が下山していた。

ここからコースタイム4時間の急な下りが続く。膝がもつかどうか心配。

正面には槍穂から差し込む光が線になって見える。天使の階段のようだ。

杓子平から稜線を振り返る。ここは登山道と言うより水が流れる岩場を下っている感じだ。大小の岩が続き気が抜けない。

秋色に染まった木々の向こうに笠ヶ岳が見える。いよいよ笠ヶ岳の見納めだ。

樹林帯に入るとときどき木々の間から山が見える場所があった。標高が高いところには赤く染まったナナカマド。その向こうに焼岳、乗鞍岳。

さらに下りてくると緑の葉越しの槍穂。これが最後の展望。

笠新道登山口に降り立つ。ほぼコースタイム。膝はよく持ちこたえてくれた。

新穂高温泉まで休みながらのんびり下山。これから登る山ガールが登山届を出していた。明日も晴れるといいね。

ここで終了と行きたいところだが駐車場は山の上。もう登る気力はない。ロープウェイで鍋平高原まで登り駐車場に向かう。もう少し頑張らなくては。

笠ヶ岳 2日目

2015.9.21~23

21日 新穂高温泉鍋平10:40-登山口11:30-ワサビ平小屋12:50-鏡平小屋16:20

22日 鏡平小屋6:20-抜戸岳11:45-笠ヶ岳14:00-笠ヶ岳山荘15:00

23日 笠ヶ岳山荘5:30-稜線分岐6:50-笠新道登山口11:00-新穂高温泉12:00

5:00に起床しパンとコーヒーの朝食を済ませる。6:00 次々に出発する登山者を横目に鏡池に行ってみた。太陽はまだ低く槍穂のシルエットが鏡池に映っていた。山荘に戻ると稜線を太陽が照らしている。今日は最高の天気が期待できそうだが朝は寒い。6:20 防寒着を着て山荘を出発する。

最初はなかなかペースが上がらない。体内に酸素が行き渡るまで30分ほどは焦らず秋色の斜面をマイペースで進む。日光が当たると急に汗が噴き出した。防寒着を脱ぎ体温を調節する。双六山荘を出発した人たちがもうここまで下山してきた。

振り返ると太陽は槍の上に顔を出していた。鏡池と鏡平山荘が見える。池がある場所が小高い丘のようになっているのが不思議な感じがした。

7:20 弓折乗越に到着。少し休憩する。山に向かう人、山から下りる人、みんなここで立ち止まり、一息入れる。

後方には双六岳方向を行き交う人たちと、遠くには鷲羽岳が見える。

前方にはこれから歩く稜線が見える。あの一番高いところは笠ヶ岳だろうか。いやたぶん抜戸岳だろう。

足下にはきのう歩いた小池新道が見える。遠くには焼岳と乗鞍岳が見える。

大ノマ乗越を過ぎ、大ノマ岳に向かう。小さなアップダウンがなかなか厳しい。

振り返ると双六山荘とテン場が見える。あそこにいけるのはいつになるだろう。

8:40 大ノマ乗越を過ぎた辺りで休憩。天気は最高だが休憩の時は日光をさえぎる物がほしいと贅沢なことを考える。

休憩をしてエネルギーも充填し再スタート。青空とそよ風が気持ちいい。

笠ヶ岳への稜線は槍穂の稜線とほぼ並行しているため左手にはいつも槍穂がある。

槍穂を背景にチングルマの花は綿毛になりハクサンフウロは紅葉が始まっている。もうすっかり秋だな。

大ノマ岳には数人の登山者が休んでいた。秩父平が見下ろせる。ここから約300m下ってまた登り返す。あの稜線まで行けば笠ヶ岳の全容が見えるはず。

鋭くとがった秩父岩は巨岩が崩壊する姿だろう。あの巨大な蟻地獄には何か名前があるのだろうか。

秩父平はすり鉢状に開けたカールだ。白い登山道が稜線まで続いている。この下に昨日涼んだ秩父沢があるが、なぜ秩父という名が付いているのだろう?

そそり立つ秩父岩。岩の摂理だな。

秩父平の中腹から振り返ると


槍から穂高までの稜線が綺麗に見える。後続の登山者も見える。追いついてきたら先に行ってもらおうと思っていたが山荘まで追いついてきた人はいなかった。

秩父沢の最後の岩場を登り切る。標高差約300m、なかなかきつい登りだ。

登り切ったところで思わず休憩。双六岳と鷲羽岳が見える。

稜線に出ても小さなアップダウンが続く。


小ピークを巻いたところで笠ヶ岳が見えた。綺麗だ。でも、とてつもなく遠い。

笠ヶ岳が見えたことに満足し休憩。時間はすでに11:30。ハイマツが切れた岩場で昼食とする。他のグループも思い思いの場所で休んでいた。

エネルギー充填し再々スタート。

登山者がピークに集まっている。あれが抜戸岳だろう。

抜戸岳は正に槍穂の展望台だ。ここでのんびり昼食休憩の人もたくさんいた。こんなに快晴で風も穏やかな日はそう多くはないだろうな。

大槍、小槍が見える。槍から伸びる西鎌と北鎌尾根、遠くに燕岳と表銀座。

大キレットにも行ってみたい。ジャンダルムは怖そうなのでやめておく。

槍ヶ岳山荘が見える。あそこに行ってからもう8年か。なかなか再訪できない。

穂高山荘が見える。あそこに行ってからもう3年もたつのか。

抜戸岳を過ぎると笠ヶ岳がぐっと近づいた感じだ。

途中の稜線から見下ろすと杓子平に笠新道が見えた。明日の朝はこの道を下る。

小さなアップダウンを繰り返して抜戸岩に到着。笠ヶ岳の正面玄関といった感じ。

抜戸岩を過ぎると山荘とテン場がはっきりと見える。カールが美しい。

テン場の岩に「ガンバ」の文字。嬉しい気遣いだ。このテン場はトイレがない。山荘までいちいち登るのは大変そう。

山荘直前で振り返る。テン場の向こうに歩いてきた稜線と見守ってくれた槍穂が広がっている。最高の眺めだ。

山荘到着13:30。 昨日と同じように素泊まりの手続きをとる。

荷物を置いてさっそく山頂に向かう。

20分で笠ヶ岳山頂。頂上には何人かの登山者が眺めを楽しんでいた。

岩場に三角点。それだけの山頂。シンプルでいいね。周りは北アルプスの山々。

山名を書いた板が1枚落ちていた。三角点に立てて記念撮影する。

今日歩いてきた稜線を見下ろす。ずいぶん歩いてきたと感激する。手前の播隆平には池塘がいくつか見える。緑の笠が芝生のようだ。時間は午後2時を過ぎ槍穂には雲が出てきた。雲の影の動きを見るのも楽しかった。

登り9時間のクリヤ谷コースを見下ろす。こんなコースいったい誰が登るんだ。

山頂手前の肩には祠が祀られている。笠を開山した先人に感謝。

雲の流れる山荘に戻る。今日は一日中楽しかった。

午後は荷物を整理しながら部屋でゆっくり過ごした。入口近くのテーブルでは中年グループが宴会をしていた。夕方になりテーブルに行くとちょうど3人分空いていたので夕食の準備に取りかかった。そこにアルバイトの女の子が来て「○時からここは自炊者用になりますので自炊でない方は席をゆずって下さい。」というようなことを言った。すると中年おばさんは「じゃあ私たちはどこで飲めばいいの?はっきり指定してよ!はっきり答えなさいよ!あなたが指定しなさいよ!」と怒り出した。同行のおじさんも「何も、そこまで言わなくても‥」とひるむほどで、周りはみんな引いていた。そのグループは結局廊下で宴会をしていた。まったく‥‥

笠ヶ岳 1日目

2015.9.21~23

21日 新穂高温泉鍋平10:40-登山口11:30-わさび平小屋12:50-鏡平小屋16:20 

22日 鏡平小屋6:20-抜戸岳11:45-笠ヶ岳14:00-笠ヶ岳山荘15:00

23日 笠ヶ岳山荘5:30-稜線分岐6:50-笠新道登山口11:00-新穂高温泉12:00

初日は鏡平山荘までの楽勝計画。コースタイムは5時間だがこの暑さではもう少しかかるだろう。そもそも出発が遅かったので近くの駐車場を求める観光客で新穂高数Km手前から大渋滞。でも鍋平の登山者用駐車場は割と空いていた。鏡平には夕方までに着けばいいくらいの気持ちでスタートした。

登山口手前に路上駐車している車もある。やっぱりルールは守らないと。

やっとの思いで登山口に到着。すでに1時間近くかかってしまった。まずは日陰を見つけて昼食をとる。

しばらく歩くと急登で有名な笠新道入口。2日後ここに降りてくる予定。

笠新道を過ぎるとすぐにわさび平小屋。帰りは絶対そうめんを食べようと思った。

わさび平小屋といえばおなじみの野菜と果物。これも帰りに食べようと思ったが、帰りはここを通らないことを忘れていた。

わさび平小屋から左俣林道を進む。とにかく暑い。体が持つかどうか心配になる。

小池新道に入ると尾根の上に槍の穂先が見えた。気が遠くなるほど暑い。

気が遠くなったところで秩父沢に着いた。冷たい水で顔を洗い、日陰に入って涼風を受け、どうにか生き返った。

秩父沢を見上げる。秩父平はあの奥だろう。明日はあの上を歩くことになる。

生き返った体でチボ岩に到着。雲が出てきたので登るのが少し楽になった。登るにつれ木々の葉が次第に秋色に移っていく。

槍は雲に隠れ、穂高ももうすぐ雲に包まれそうだった。

イタドリヶ原はイタドリが茂っているだけだったので先を急ぐ。

シシウドヶ原にはシシウドがあったようだがすでに雲の中でよく見えなかった。

熊はなぜここで踊ったのか、あるいは熊の階段の途中なのか、疑問は尽きない。

石に書いた案内。こういう心遣いはありがたい。

雲の中の鏡池に到着。波はなく鏡のようだったが鏡に映すものが無かった。残念。

やっと鏡平小屋に着いた。素泊まりの手続きをとり夕食を持って外のテーブルに着く。京都から来たという2人の山ガールと相席になった。山ガールは2日前にもここに泊まり、昨日は三俣山荘に泊まって山にも登らずぶらぶらしてきたらしい。2日ぶりに鏡平に戻ってみるとすっかり秋が深まっていたと言っていた。まったくうらやましい山の楽しみ方をしている。山に来る若者は礼儀正しく好感が持てる。この山ガールもとても感じがいい2人だった。

夕食を楽しんでいると木々の間に槍の穂先が現れた。そして見る見るうちに赤く染まりだした。カメラを持って慌てて鏡池に向かった。

鏡池の向こうに雲に浮かぶ槍があった。大喰岳と中岳が赤く染まっている。中岳と南岳の間を雲が流れ落ちている。ほんの1分間の幻想的なショーだった。やがて槍は雲に隠れてしまった。

夕焼けのショーが終わると急に気温が下がる。小屋に戻ってバッジを購入。鏡平のバッジはユニークでとてもいい。

白山 2日目

2015.8.1~3

1日 白川郷見学-市ノ瀬

2日 別当出会5:20-室堂9:30~10:00-御前峰10:40-お池巡り-室堂12:30

3日 室堂6:20-黒ボコ岩6:40-観光新道-別当坂分岐8:10-別当出会9:20

ご来光を見に行く老年のグループが大騒ぎをして出かけた後、明るくなるまでもう一眠りした。朝食を食べるために外のテーブルに行くと、白山頂上は雲の笠をかぶっていた。ご来光はどうだったか分からないが白い笠は輝いて綺麗だった。

朝食後荷物を整理して6:20室堂を後にする。センターにはまだ沢山の人がいた。

振り返るとまだ白山は笠をかぶり、イブキトラノオは風に揺れていた。

五葉坂を下り弥陀ヶ原を過ぎるのはあっという間だ。降るのは何と速いことか。

20分で黒ボコ岩に到着。知らない画伯のレリーフがあった。ここから観光新道を下る。新道と名付けられてはいるが千年以上の歴史を誇る信仰の道。深田久弥が白山初登山の折りに登った道である。

黒ボコ岩から殿ヶ池避難小屋までの道は見事なお花畑の連続だった。谷を見下ろすとまだ霧が立ちこめている。霧の中をたくさんの花が泳いでいるようだ。

空を見上げると十の字!! あそこだけ水蒸気が!! 神からの贈り物?? 

降りるつれ花の種類も数も増えていく。朝の涼しい風に花がなびいている。

ルンルン気分で歩き出す。こんなに美しい登山道は見たことない。

ここへ来て良かった。この道を歩かないと白山の魅力が半減してしまう。

日本の植物研究が進み最後に高山植物が研究対象となったとき、当時の研究家達は最初に白山の調査をしたと聞いた。それほど高山植物の宝庫として有名だったということだろう。白山で発見された植物にはハクサン○○と山の名前が付いている。ハクサンフウロ、ハクサンシャジン、ハクサンコザクラ、ハクサンイチゲ・・・、ルンルンが止まらない。

殿ヶ池避難小屋に到着。小屋に着く直前、登山道でマ○シに遭遇してしまった。 ヘ○という単語を発するのも嫌いな私はそれ以後相棒に前を歩いてもらった。

避難小屋を過ぎると樹林帯に入る。アサギマダラがヨツバヒヨドリの蜜を吸っていた。アサギマダラはなぜかこの花が好きだ。

9:20別当出会に到着。涼しいうちに降りてこられた。今日も暑くなりそう。

到着はちょうどバスが出る時間だった。ラッキー! 

市ノ瀬まで戻った後、車で栃木まで帰る。今日中には帰れるだろう。

白山 1日目

2015.8.1~3

1日 白川郷見学-市ノ瀬

2日 別当出会5:20-室堂9:30~10:00-御前峰10:40-お池巡り-室堂12:30

3日 室堂6:20-黒ボコ岩6:40-観光新道-別当坂分岐8:10-別当出会9:20

朝4時起床、朝食を済ませバスの列に並ぶ。5時の始発のバスは何台も用意されており全員が乗れるようになっていてありがたい。20分ほどバスに揺られるとまだ薄暗い別当出会に到着した。

トイレを済ませ、早速スタート。まずは鳥居をくぐり、長い吊り橋を渡る。

30分ほど登ると中半場に到着。多くの人が休憩していた。まだ時間は6時、谷底まで日光は届かず、空気はひんやりとしていた。

甚之助避難小屋に着くことには太陽も高くのぼり、青空に稜線が浮かんでいた。

南竜道分岐に着くとほとんどの人が黒ボコ岩を目指していった。私たちは南竜道を進み少し遠回りになるがエコーラインから登ることに決めていた。人が少ないこととお花畑が見事と聞いていたからである。南竜道にもたくさんの花が咲いていた。

20分ほど歩くとエコーライン分岐に着く。ゆるやかな斜面にコバイケイソウの白い花が浮かんでいる。なんて気持ちのいい場所だろう。何度も立ち止まりさわやかな風を思いっきり吸い込んだ。

コバイケイソウの向こうに南竜山荘が見える。南竜ケ馬場を経由する展望歩道コースも静かな山旅を楽しめそうだ。

コバイケイソウの足下にはクロユリが沢山咲いていた。花を見ながらゆっくり登っているとおもしろいものを見つけた。黒くないクロユリである。エコーラインの登山道脇に1輪だけ咲いていた。

左、黒いクロユリ、右、黒くないクロユリ。形は同じ。

写真を撮っていると制服のようなものを着たグループが追いついてきた。自然保護の担当者らしく、登山者から黒くないクロユリを見たという話を聞き探していたのだという。場所を教え感謝されてしまった。

黒くないクロユリ。黒い色素だけが抜けちゃったみたいでひ弱な感じ。

弥陀ヶ原に近づくにつれ一気に花の種類が増えてきた。背の低い植物の群落が増え、開放感が広がる。

弥陀ヶ原の開放感は素晴らしい。雪渓を通ってきた風が冷たく心地よい。

ちょっとポーズ。それにしても気持ちがいい場所だ。
夕べ宿泊した人たちだろう。写真を撮りながらゆっくり下山して行った。

黒ボコ岩を経由する人たちが見える。雲と一緒に歩いているかのようだ。

五葉坂の岩の急登を終えて振り返ると弥陀ヶ原に2本の登山道が見えた。今日は左のエコーラインで登り、明日は右の観光新道で降りる。五葉坂を登り切ると室堂センターはすぐだった。

室堂センターは完全予約制なので混雑状況がわかる。私たちは混雑を避け自炊棟を予約したが、自炊棟も最終的には8割くらいが埋まった。受付を済ますと係の人が部屋まで案内してくれた。到着が9:30と早かったので1階奥の落ち着ける場所をとることができた。

お花畑の中に建つ室堂センター。定員750名完全予約制。石川県のやる気の結晶。
ハクサンフウロとイブキトラノオのお花畑。こんなお花畑の中に室堂センターはあった。

センター裏の白山奥宮は工事中だった。シートはかかっているが中には入れた。

荷物を整理し、ちょっと休憩してから山頂に向かう。コースタイムは40分位だが急いで登ってはもったいない。花を見ながらゆっくり登る。

徐々に傾斜が増し、高天ケ原を過ぎるとハイマツと岩の急登になる。振り返ると室堂センターと雪渓が青空に映えていた。

山頂直下には白山比咩神社(しらやまひめじんじゃ)奥宮がある。何の神様かよく分からないがとりあえずお参りし、最高峰の御前峰(ごぜんがみね)に達する。

白山は御前峰、剣ケ峰、大汝峰の総称で、最高峰の御前峰に一等三角点が置かれている。山頂標識の向こうに雪をまとった剣が峰が見えた。

山頂から見下ろすと雪を浮かべた池が見える。右が紺屋ケ池、左が油ケ池、その間に登山道が続き剣ケ峰を巻くように伸びている。お池巡りも楽しそう。   

山頂は思いのほか狭い。登山者が次々とやってくる。記念写真を撮ったら山頂は譲るのが山のマナー。お池巡りに出発する。

まず頂上から御宝庫(おたからぐら)の岩峰を目指してゆるやかに下る。

それから池に向かってザレた急坂をジグザグに下りていく。最初は油ケ池。

次の紺屋ケ池では雪渓に乗って遊んだ。

雪渓の先端は水の中で青く光って美しい。

剣ケ峰から雲がわき、翠ケ池は鈍い青色だった。

大きな岩の間を抜けると血ノ池に出る。血ノ池という名前に反して澄んだ池だ。

池に沿って進むと雪渓に覆われた千蛇ケ池になる。千蛇ケ池には千匹のおろちを雪渓で閉じ込めているらしい。雪渓が融けておろちが出そうになると山頂の御宝庫が崩れてくる仕組みらしい。万年雪なのに池があるとどうして分かったのだろう。

千蛇ケ池を過ぎ、クロユリが群生するお花畑コースを下って戻った。前後に登山者のいない静かな散歩を楽しんだ。室堂に戻ったのはまだ太陽も高い12:30だった。

食堂で冷たいビールを飲み至福の時を過ごす。相棒は高山植物の説明会に参加していた。夜が近づき、太陽が隠れると同時に思いがけないショーが始まった。雲が燃えるように赤く染まり地面を赤く照らしたのだ。

外に集う人たちから歓声が上がった。雲はしばらく赤く染まっていた。やがて夜の帳が降りると雲の中で稲妻が光った。巨大積乱雲の大サービスショーだった。

自炊棟に戻り夕食を採った。老年のグループが賑やかにうどんを作っていた。「毎年大鍋を背負ってうどんを食べにやってくる。これが最高にうまい。」と、大声で話していた。大声は消灯の9時まで延々と続いた。9時消灯なので誰も文句は言わないが・・・。

消灯時間が過ぎ皆が寝静まった頃、年配女性のグループが山から戻ってきた。今頃戻って来るとは何て非常識な。グループは小声で話しながら2階の自分たちの寝床に行ったが、知らない男が寝ていたので別の場所を探し始めた。その男は、寝る前に2階をのぞくと広い場所が空いていたので「俺はここで寝る」と言って勝手に場所を変えたのだった。年配女性グループは結局私の真上に移動してきて荷物の整理を始めた。みんなが寝静まった中、いつまでもザックが床にこすれる音が響き、落ち着いた場所をとったはずなのに最悪の場所になってしまった。

夜明け前、老年のグループはご来光を見に行くのだろう皆が寝静まっている時間から動き出した。真っ暗な部屋の中、相変わらず大声で話している。たまりかねた女性登山者が「まだ寝ている人もいるんだから、静かにして下さい。」と言うと、「外で待てるから。慌てなくていいよ。」と、さらに大声で怒鳴って出て行った。まったく・・・・。

金峰山

2015.7.24

23日 大弛峠13:45―国師ケ岳14:45―北奥千丈岳15:08―大弛峠16:00

24日 大弛峠5:20―朝日岳6:20―金峰山7:20~8:30―朝日岳9:30―大弛峠10:30

夜明けと共に起きると駐車場の車は少し増えていた。車の横にテーブルを出し、食事を済ませコーヒーを飲んだ後、ナナカマドの木をくぐって金峰山に向かう。霧が出ているが天気は回復に向かっている。今日は晴れそうな気配。

朝日が差し込むシラビソの森を登る。

登山道から光差す尾根と霧が渦巻く谷が見えた。風はないが空の雲の流れが速い。

朝日岳手前の岩場はまだ雲に包まれていて展望はなかった。森の中のハクサンシャクナゲを愛でながら10分ほど登ると朝日岳山頂。朽ちた標識が落ちていた。

朝日岳見晴らしからの富士山。端正な姿が雲海に浮かぶ。

朝日岳を過ぎると満開のシャクナゲロードが始まる。昨日の濡れたシャクナゲは妖艶な美女だったが今日は清楚な少女に変わっていた。

シャクナゲロードを過ぎると突然展望が開けた。青空を楽しみながら進むと遠くに五丈岩が見える。一気にテンションが上がる。

一番高い岩の上に立つと、山頂標識と三角点は足下の岩場にあった。五丈岩は下界を見下ろすかのようにどっしりと構えている。

高さ15m、5階建てのビルに相当し圧倒的な存在感を放っている。古くから信仰の対象となり、かつては籠堂が置かれ逗子には蔵王権現が祀られていたという。

五丈岩の正面から見て右側の巨岩の上に祠があり石積みで守られている。調べるとこれは本櫻神社(山梨県)の本宮の祠で、五丈岩の下には金峰山神社(長野県)の奥の院の祠があるらしい。

五丈岩の後ろに続く尾根、千代の吹き上げコース。14年前はこの尾根を登って五丈岩に達した。帰りは雪が舞っていたっけ。

難攻不落の砦のような瑞牆山。

八ヶ岳には雲がかかっている。

鳳凰三山の後ろに北岳、間ノ岳、農鳥岳の白峰三山が見える。

そして五丈岩と富士山

端正な姿の富士。どこから見ても美しい。

五丈岩を眺めながらのんびりコーヒーを飲む。近くで休んでいた青年が飴をくれた。山を始めたばかりで簡単な山から登っていると言っていた。1時間ほどすると突然雲が上がってきた。そろそろ潮時かと下山を開始する。

朝日岳の見晴らしから振り返ると五丈岩の雲はすっかり晴れていた。

森の中を降りる。シラビソやコバイケイソウの若葉に混じって、気の早いナナカマドが紅葉していた。

約5時間で駐車場に戻る。来るときは長野側から来たがあの悪路はもう運転したくない。帰りは山梨側から帰る。

高速道路を走っていると前方にとんでもないものが現れた。黒い雲から一筋の渦が地上に向かって伸びてくる。竜巻だ。まずい。高速道路では逃げ場が無い。と思っていたら1分ほどで渦は消えていった。良かった。無事に帰れそう。